2002年 高等学校総合体育大会 第31回登山競技大会 講評

審査員長 小林 國弘

 

 大会に参加された各校の生徒諸君、並びに顧問の先生方、お疲れ様でした。心配された天候も、何とかもち、特に競技中に雨天にならなかったことは、運営する側としても胸を撫で下ろしたことでした。

 競技に当たっては、それぞれ緊張した面持ちで臨んでおり、ベストを尽くされたことと思います。よくトレーニングを積んだと見られるチーム、学校もあり、将来に期待できる一面を伺わせました。

 しかし、一方、練習不足や注意してもらいたい点等も見受けられたことも事実です。以下は、各審査に当たった先生方から出された意見です。各学校とも、参考にされ、次の大会、というより日頃の活動において、一層のレベルアップに繋げて頂ければ幸いです。

 

1、      設営

   サンダル履きで行っているチームがありました。いくら車横付けのオートキャンプ場とはいえ、矢張り不適切だと思われます。運動靴等で行うようにしてください。

   テントの部品(ポール等)が、不備なチームがありました。出発前に確実な点検を行うようにしてください。また、ペグなども、市販の物をそのまま使用しているチームもありますが、自分たちにとって使い易い物を、またキャンプ場の状況に合わせても工夫するなどしてほしいものです。

2、      気象

  [設問]

   気温減率、風による体感温度、季節毎の典型的な気圧配置等、基本的な出題をしました。この程度は、登山者の気象に関する常識として、是非習得してください。

[天気図]

   最近は山行中に天気図を書く事が少なくなりましたが、天気図を書く練習を繰り返すことによって、ラジオ等から得られる情報をより的確に判断できます。天気図は「習うより慣れよ。」何枚書いたかによって決まります。誰が見てもわかり易い天気図の作成に心がけましょう。

3、      生活

   ごみの減量に工夫が見られたチームが多く見られた反面、その場で玉ねぎの皮をむく等のチームもありました。事前の半調理などもごみの減量につながるので、一層の工夫を期待します。

   車からダンボール箱で食料を持ち込むチーム、車に食料や忘れ物を取りに行くチームなどが見受けられました。実際の登山と同様に、事前に食料の区分けをしてくるなどの準備をしておいてください。

   コンロ台や風防の使用は定着してきている半面、少しの風で倒れる風防もあり、実効性のある用具の準備と活用をして欲しいと思います。

   軍手を持っていながら、火器取り扱い時に使用していないチームもありました。また、炊事に不慣れなチームも見られました。学校でも練習できることですから、日頃の部活動に取り入れてください。

4、      歩行

   今回は幕営用具が無かったためか、マットやポールをザックの外に付けることも無く、パッキングは概ね良好でした。

   疲れもあるためか、離れて行動するチームが数校ありました。これは絶対止めてください。遭難の原因になります。

   歩行バランスについては、山行回数(経験)の差が出ました。沢山歩くことでバランスもよくなります。日帰りでもいいので、経験を積むようにしてください。

   先頭の生徒は後続の生徒に気をつかってください。ペース配分はもとより、足場の悪い所や危険個所などメンバーに確実な指示(声がけ)をすること。また、後続の生徒は、先行者にメンバーの様子を伝えるなど、互いの役割を自覚してください。それがチームワークというものです。

   体力に余裕があるのに、他のメンバーに手を差し伸べない、という光景が見られました。あらかじめ担荷重量を調整したり、バテた者はすぐ助ける、そういうチームになってください。

   服装では、長袖着用など、概ねできていました。ただ、予報等で残雪のあることを知らせてあったはずですが、スパッツを携行していないチームがあり、残念でした。また、暑くなると帽子を被らないチームもありました。

5、      装備

   個人装備(ヘッドランプ、コンパス、地図、時計、非常食、計画書、マッチ又はライター)

共同装備(医薬品、ラジオ、火器、コッフェル)  

を見ました。ヘッドランプ、ラジオについては、電池の絶縁処理、若しくはスイッチが不用意に入らない工夫(スイッチを粘着テープで止める等)をしてください。予備電池、予備電球も忘れないようにしてください。

   非常食は行動食とは別にまとめておいてください。非常食として適当な物は、高カロリー、火を使わず、また、調理せずに食べられる物、疲れていて通常の食糧は喉を通らない状況でも食べられる物を用意することが大切です。

   個人装備なのに、他のメンバーが持っているので自分は持ってない、という人がいました。非常事態になれば、1人で行動することは当然あり得ます。個人装備は個人で携行してください。

   火器(コンロ)を持っていても、コッフェルを持参しないチームがありました。非常時に、お湯ぐらい沸かせるようにしておきましょう。

6、      計画、記録

  [計画]

   @夜間連絡先、A現地連絡先、B共同装備個人分担割、C予備食、D概念図、E比高断面図、(各0.5点)を見ました。@〜Cは概ね書かれていましたが、概念図、比高断面図が不十分な学校が目立ちました。概念図には、主要地点名、ピーク、ルート等の記載が必要です。比高断面図についても同様です。

   現地連絡先などに、記入ミスがありました。ただ作るだけでなく、見直しもしっかりしましょう。

   大会を利用して、他校と計画書の交換をしましょう。他校の工夫している点など、大いに参考になるはずです。

[記録]

   地点名は、場所の名前がわかる限り、固有名詞で記載するようにしましょう。スタート、分岐、ゴール、では、何処のことか後日わからなくなります。

   自分たちは休憩しなくても、顕著な地点は通過時刻を記録するようにしましょう。

   場所と時刻だけでなく、そのときの様子、見たもの、感じたこと、思ったことなども記載しておくと、読み返して楽しいものになります。

7、      その他

   一人でもテント場のごみ拾いをしている生徒がありました。登山をする者としては当然と言えばそれまでかもしれませんが、実際にはなかなか出来ない事です。全員がこういうことを、当たり前に、自然に出来るようになって欲しいものです。

   皆さんが黒姫山に向かってスタートした後に、入り口が開いたままのテントがいくつかありました。風が吹けば飛ばされ易くなり、雨が降れば吹き込みます。戸締りはきちんとしましょう。