2004年  第33回長野県登山大会講評

審査委員長   重田 肇

審査員  重田 肇、福沢 桂、西牧岳哉、横沢克彦、西野祐司

久根 敏、浮須由美、大西 浩、向井真弓、村主恭則

     松田 大、下岡英樹、大西英樹、福島伸一、矢島勝美

     島田嘉一、遠藤正孝、今滝郁夫

 

 大会前の心配とは逆に3日間、好天に恵まれました。ゴールした選手諸君から山頂で富士山を手のひらに載せた写真を撮ったとか、長野県中の山が見えてうれしかったという話を聞いて、何よりも登山を楽しめた大会になったことをうれしく思います。顧問の先生方のご協力にも改めて感謝申し上げます。

 今大会の参加チームは男子12チーム(このほかBチームに2つ)、女子4チームでした。選手が1人足りないために、残念ながらオブザーバーに回らざるを得ない学校もいくつかありました。全参加選手は100名余。長野県の東の果てにある金峰山を会場にした大会でした。大会でもないと登る機会がない山だと思います。登山競技への参加者が徐々に減っていく傾向が止まらないのは残念なことですが、他校の選手とのふれあいを通して学んだことも数多くあると思います。各学校で楽しく、安全な登山を重ねていくために大会の審査項目を役立ててください。

1、体力点(35点)

総合的体力(20点)

スタートからゴールまで、全コースの規定時間を男子8時間、女子8時間半しました。男子40キロ、女子32キロの担荷重量では無理のない時間設定だったと思います。設置時間内に男子12チーム中9チーム、女子4チーム中2チームがゴールしました。規定時間オーバーのチームは3分遅れるごとに1点減点しました(60分の遅れで総合的体力は0点になります)。余裕も持った山行を楽しむためにも、時間オーバーのチームは体力トレーニングを積んでください。

通過時間指定区間体力(15点)

 金峰山登りの1980m地点から2302m標高点の先までの区間を設定。男子23分、女子30分の設定タイム。コースが短いので、30秒遅れるごとに1点の減点としました。0点のチームが男子12チーム中6チーム、女子は4チーム中3チームでした。上位入賞を狙うチームとそうでないチームとの差が著しいという感想を持ちました。

また選手がバラバラになってゴールするチームが目立ちました。特区間といえどもパーティー行動が原則です。お互いが助け合うなど、山での生活の基本を見直してください。

2、歩行点(15点)

歩行バランス、チームワーク、パッキング、山行に適した服装(帽子、長袖シャツ、軍手着用等)を見ました。

ゼッケンのないチーム、ゼッケンが雨蓋で隠れているチームがありました。審査上、チーム名がはっきり分かるようにしてください。

 長袖シャツ、帽子の着用については予報で連絡をしてあります。遵守してください。

 以下の服装は、岩、木の枝等に引っかかり危険です。注意をしてください。

1.首からタオルコンパス等をぶら下げていること。(首に巻いたタオルはシャツの中に入れるといった工夫をする)

2.細引き等がザックの脇についていること。

3.上着を腰に巻き付けている。

 岩場、滑りやすい下りなどでは軍手の着用が必要です。普段の山行でも励行してください。

3、地形点(15点)

今回は設定が難しかったためか、正解率が低かった。

尾根上の鞍部、顕著な尾根の張りだしや沢の合流、傾斜の変化などを地図で読み取るようにしてください。日頃の登山活動でも休憩時などで地図を見る習慣を身につけることが大切です。自分の現在地が分からなくなった場合には、地図で確認できるところまで戻ることが道に迷わない最大の防衛策です。

4、装備点(10点)

個人装備:コンパス、細引き、時計、非常食、計画書、ホイッスル、ナイフ

団体装備:医薬品(体温計)、ツェルト、火器と燃料、コッヘル、温度計、ラジオ

以上の物を見ました。

非常食が、行動食と区分けされていない学校が目立ちました。非常食は緊急の事態に備え確保しておくべき物です。山行中の行動食とは明確に区別をしてください。疲れているとき、水を必要としないでも、のどを通るものを携行してください。非常用の私物(非常食・予備電池・緊急用のアルミシートなど)を1つにまとめたピンチパックを要しておくのも役に立ちます。

細引きは太さ6ミリ、長さ5メートル以上のものを用意して下さい。太さが不足している物が目立ちました。実用的ではありません。

カッターナイフを持っているチームがありました。山では実用的ではありません。

ラジオの電池もヘッドランプ同様に絶縁処理をしてください。 

5、生活技術(10点)

1設営

@     手際の良さチームワークA雨蓋、袋物の処理B張り綱、ペグの適切さC軍手の着用

Dテント内の整理を見ました。

 4人が協力して作業ができないチーム、テントの袋を出しっぱなしのチームが見られました。

 ペグが十分打ち込めない場合、張り綱はペグの根本まで下げてください。

軍手の着用は危険防止のために必要です。軍手はペグを持つ側には必要です(利き手には必ずしも必要ではありません)。

直接採点はしませんでしたが、以下の点についても注意して下さい。

ポールは地面の上に出さずに、テントの上に置く(砂が入る、凍結の防止)

木槌の代わりに石、足でペグを打ち込むとペグが折れやすい。

2炊事

@     火器使用時の軍手Aコンロ台、風防の使用B計画書との一致Cゴミ処理の工夫

D食料の区分けを見ました。

コンロ台、軍手は安全上から必要です。普段の山行でも注意して下さい。コンロ台代わりに新聞紙を使っているチームがありました。危険です、厳禁。

1セットのコンロ台、風防で2台のコンロを使用しているチームがありました。危険です。

店から買ったままの状態で食材を持ってきているチームもありました。よけいな包装(箱・トレー等)は事前に除いてきて下さい。

食料の区分けはそれぞれの食事毎にレジ袋に入れるなど、区分けしてくる必要があります。

以下、今回減点はしませんでしたが注意してほしいことを列挙します。

     軽量化への配慮(ビン等は事前に除いてくる)

     山では相当体力を使います。カロリー計算も考慮して下さい。

     肉などは事前に火を通すなどの処理をしてきて下さい。

     炊事中、コッフェルのふたを開ける時は、必ずメンバーの一人がコッフェルを押さえるなど安全に配慮して下さい。この場合も軍手の着用を忘れずに。

     調理用シートの使用については、食品を扱う上での衛生面等で必要とする意見が多くありました。全国・北信越大会では必携です。形状等については今後通知していきたいと思います。

6、気象(7点)

天気図を書く練習をしていないチームが目立ちました。天気図を書くことによって気象を読む力がつきます。練習を積んで下さい。

設問は、気温の逓減率、風速に関する体感温度を出題しています。その他気象に関する基本的な事象です。

7、計画・記録(8点)

計画書

@     メンバーの生年月日、血液型 A保護者名・連絡先 B共同装備の個人分担 

C手書きの概念図(ルートの記載) D断面図 E医薬品リスト(使用法も)を見ました。

概念図、断面図にスタート、ゴール地点の記載は必要です。ルートの記載も忘れずに。

医薬品は使用方法も記載して下さい。

記録

記録は次回に同じ山を訪れる場合に参考になるようにものです。その観点から、地点欄にフラッグ番号を記入は不可です。コースをたどる上で特徴のある場所を記載して下さい。スタート、ゴール地点も「ふれあいの森」「廻目平」と具体的に記入するよう注意してください。

「主な動植物」「記事」の欄は詳細に記入してあるチームと、ほとんど記載のないチームとの差が大きい。登山道の分岐など重要な地点については以後の参考に役立つよう記入を励行して下さい。

天候の欄は天気図記号で記入するよう指示がありました。

 

 

 来年度の大会は長野県の南端、熊伏山が会場です。ここも登る機会がめったにない山です。今大会で不十分だった点を改善し、来年度はさらに多くの選手の参加と楽しく、安全な大会になるよう練習をつんできてください。日ごろのトレーニング、夏山合宿でも安全で、実りのある活動を重ねてください。選手の皆さん、監督顧問の先生方、ご苦労様でした。