2005年  第34回長野県登山大会講評

 

審査委員長   福澤 桂

審査員  福澤 桂、横沢克彦、西牧岳哉、福島伸一、島田嘉一、西野祐司、重田 肇、塩川淳男、浜 恒弘、村主恭則、

向井真弓、大西 浩、松田 大、浮須由美、大西英樹、 筒井 清

 

 県南、静岡県との県境という地理不便な場所での大会でしたが、地元天龍村や顧問の先生方のご協力により、無事3日間の競技を終えることが出来ました。改めて感謝申し上げます。

 今大会の参加チームは男子12チーム(このほか2つのBチーム)、女子7チームでした。全参加選手は120名余。長野県と静岡県との県境にある熊伏山を会場にした大会でした。大会でもないと滅多に来ることもない地域であり、登ったりする機会のない山だと思います。

登山競技への参加者が徐々に減っていく傾向が止まらないのは残念なことですが、他校の選手とのふれあいを通して学んだことも数多くあると思います。各学校で楽しく、安全な登山を重ねていくために大会の審査項目を役立ててください。

1、体力点(35点)

総合的体力(20点)

スタートからゴールまで、全コースの規定時間を男子7時間、女子8時間としました。男子40キロ、女子32キロの担荷重量では無理のない時間設定だったと思います。設置時間内に男子12チーム中10チーム、女子7チーム中6チームがゴールしました。規定時間オーバーのチームは3分遅れるごとに1点減点しました(60分の遅れで総合的体力は0点になります)。余裕も持った山行を楽しむためにも、時間オーバーのチームは体力トレーニングを積んでください。

 

通過時間指定区間体力(15点)

 青崩峠駐車場から1308m二つめのあずまやまでの区間を設定。プラ擬木の階段や下りが何ヶ所かあるなどを考慮し、男子30分、女子40分を設定タイムとし、60秒遅れるごとに1点の減点としました。0点のチームが男子12チーム中6チーム、女子は7チーム中5チームでした。上位入賞を狙うチームとそうでないチームとの差が著しいという感想を持ちました。

2、歩行点(15点)

歩行バランス、チームワーク、パッキング、山行に適した服装(帽子、長袖シャツ、靴)を見ました。

 チームで一体となって行動していないパーティーが目立った。特に、斜面のリズムが変わるところで、先頭が先行しチームがばらけてしまうということが目につきました。チームとしての配慮が必要であると思われます。

 今回は、帽子を被っていなかったり、タオルを首などにかけている選手が目立ちました。ほかにも、ペットボトルを手に持って歩いているチームもありました。危険防止のためにもこのようなことはぜひ避けてもらいたいと思います。

 全体として基礎体力が不足しているために歩行バランスが悪くなり、スリップ等する生徒が目立ったように思います。

 

3、地形点(15点)

地図と地形をよく見て歩いているチームは、高得点になっていますが、地図をあまり見ていないか、読めないチームは得点が低いという両極化が見られました。

 沢や尾根など地形的な特色と地図を見比べながら歩いていれば、今回出題したポイントはすべて読めたはずです。

今回得点が低かった学校は、日頃の山行で現在地を確かめながら、地図を見ながら歩くようにしてほしいと思います。

 

4、装備点(10点)

個人装備:コンパス、非常食、計画書、ホイッスル、ナイフ、ヘッドランプ、ライター又

はマッチ

団体装備:医薬品(体温計)、ツェルト、温度計

以上の物を見ました。

非常食を食べてしまっているチームがありましたが、非常食は非常時の為のものであり、行動食とは明確に区別して、通常の山行では最後まで手をつけずにおいておくべきものです。また、非常食として十分なカロリーになっていないものもありましたが、今回は減点対象にはしませんでした。疲れているとき、十分なカロリーがあり水を必要としないでも、のどを通るものを携行してください。

ヘッドランプについてはすべてのチームが持っていましたが、絶縁処理をしていないチームが目立ちました。スイッチが入ってしまわないような工夫を必ずしてほしいと思います。

ナイフは、折りたたみ式、もしくはさやのきちんとあるものを利用してください。紙を重ねて簡易的なさやにしたナイフを持っているチームがありましたが、危険ですのでやめてほしいと思います。

 

5、生活技術(10点)

 今回は競技運営の都合で、設営審査と炊事審査の間に時間があったために、少々の混乱がありました。設営審査は、ザックを完全に閉めた最初の状態から始め、炊事審査は設営審査が終わった状態から始めることになります。つまり、設営審査が終わってから炊事審査が始まるまでどのチームも自分の装備に触れることは出来ません。忘れないでください。

 

1設営

@     手際の良さチームワークA雨蓋、袋物の処理B張り綱、ペグの適切さC軍手の着用

Dテント内の整理を見ました。

 4人が協力して作業ができなかったり、テントやペグの袋を出しっぱなしにしたり、ポールをばらまいたりしているチームが見られました。

 ペグが十分打ち込めない場合、張り綱はペグの根本まで下げてください。

軍手の着用は危険防止のために必要です。軍手はペグを持つ側には必要です(利き手には必ずしも必要ではありません)。

 

 

 

 

2炊事

@     火器使用時の軍手 Aコンロ台、風防の使用 B計画書との一致 C調理シート

D 食料の区分けを見ました。

火器を使用するとき軍手をしていないチームが目立ちました。軍手は安全上から必要です。普段の山行でも注意して下さい。

火器に対してコンロ台と風防の数が足りなかったり、あっても使っていなかったり、風で簡単に飛んでしまいそうな家庭用のアルミ製風防を使っているチームがありました。コンロ台や風防は安全面から必要なものです。安全になるように使わなければ意味はありません。

食料の区分けはそれぞれの食事毎にレジ袋に入れるなど、区分けしてくる必要があります。

 

6、気象(7点)

最近は携帯電話等で天気図、天気予報が手軽に入手できるが、天気図が書けることによって、天気図が読めるようになるので天気図を書く技術は、重要な登山技術の1つであると思います。

山での気象判断は時として生死を分けることがあります。是非、天気図を書き、気象に親しみましょう。

 

7、計画・記録(8点)

計画書

@     緊急連絡先 A保護者名・連絡先 B共同装備の個人分担 C 共同装備個人分担の記載

D 予備食の記載 D 手書き概念図(ルート記載) E 医薬品リスト(使用法も)を見ました。

予備食の記載がなかったり、具体的な内容の書かれていないものが目立った。

概念図は、ルート記載がはっきりしていなかったり、スタート、ゴール、または進行方向が分からないもの、尾根が書かれていないものが目立った。

医薬品リストは、一回の服用料や、1日の服用回数といった具体的な使用方法が書かれていないものが目立った。

 

記録

記録は、後から見て「自分がどんな山に行ったか」「どんなコースタイムを取ったか」「どんな様子だったか」など、その山を再び訪れるとき、あるいは山の記憶が薄れてきたとき、自分の記録を見て、あるいは他人がその記録を見て、イメージが構築できるようなものでなくてはならない。

地図を見て、誰でも判断できる地点(「県境分岐の尾根」、「青崩峠」など)を記入するように注意してください。

「主な動植物」「記事」の欄は詳細に記入してあるチームと、ほとんど記載のないチームとの差がありました。

天候の欄は、天気図記号で記入するよう指示があったにもかかわらず、約半数のチームが日本語で記入してありました。気をつけてください。

 

 来年度の大会は菅平が会場です。今大会で不十分だった点を改善し、来年度はさらに多くの選手の参加と、楽しく安全な大会になるよう練習をつんできてください。

選手の皆さん、監督顧問の先生方、ご苦労様でした。